「珠姫?」

右目を瞑りながら、横を向いた。

心配そうな賢人の顔。

今まで、どれだけこの顔を、私は見てきたのか。

「賢人……」

「大丈夫?酷かったら、横になった方がいい。」

自分の誕生日だと言うのに、私の体を心配してくれるなんて。

そう思った時、一瞬時計を手渡すシーンが、目の前を過ぎ去った。

「どうした?珠姫。」

「う、ううん。」


時計屋さんで頭を過った、ペアの時計。

それを賢人に渡したのも、確か、誕生日の時?


「珠姫、珠姫!」

思い出した私の肩を、必死に揺らす賢人。

「あ……ごめん。頭痛治ったみたい……」

「なんだよ。」

力が抜けたように、ダランと手を下ろしながら、自分の席に彼は戻った。

「ごめんね、驚かせて。」

「いいって。何でもなかったんだから。」