「そんな、悲しい顔しない。」

賢人から出た、思いがけない言葉。

「せっかくの誕生日なのに、何が悲しいの?」

「そうよね。私ったら、可笑しい!」

慌ててビールを飲んだ。

「はぁ~!美味しい!」

一気に半分も無くなった私のグラスに、賢人がビールを注ぐ。

「これじゃあ、どっちの誕生日か、分かんないね。」

「いいんだよ。二人しかいないんだから。僕はね、珠姫が楽しそうに飲んでる姿を見るのが、好きで仕方ないんだよ。」

「人を飲んべえみたいに。」

「あれ?違ったっけ?」

賢人と冗談を言いながら、誕生日だと言うのに、いつもの夕食と同じ雰囲気。

何かが足りないと思った時、頭がズキッと痛んだ。

「……っ!」

思わず頭の右側を押さえると、賢人が立ち上がって、私の横に来てくれた。