そして、賢人が帰って来た夜。

私は賢人が好きな、ハンバーグステーキを作った。

「うわっ!美味しそう!」

賢人はスーツのままで、まるで子供のように、ハンバーグを焼いているところを、見ていた。

「賢人、早く着替えてきて。」

「うん。」

やっと動き始めた賢人に、やれやれと呆れながら、最後にソースを作った。


着替えて部屋から出てきた賢人は、目をキラキラさせていた。

「ハンバーグ、まだ?」

「今、できたところ。」

テーブルの上にハンバーグを並べて、ちょっと高いビールも用意する。

「早く食べよう。」

「待って。誕生日ケーキも、用意したの。」

私は賢人に、“待った“をかけると、冷蔵庫から買っておいたケーキを取り出した。

「ケーキなんて、いらないよ。」

「そう言う訳には、いかないでしょ?」