賢人は、冷静に返事をしたつもりだったらしいけど、にやにやしているのは、隣にいる私にも分かる。

「誕生日プレゼント、何がほしい?」

「何でもいいよ。」

正直言って、婚約者だって言うのに、賢人の好みが分からない。

ここ数ヵ月の賢人しか、知らないからなんだろうけど。

「何でもいいじゃあ、迷うでしょ。これって言うのを教えて。」

「迷ってよ。」

賢人は、不貞腐れている。

「僕の事を考えながら、迷ってよ。迷って迷って、それで選んでくれたら、何も言わない。」

バックミラーを確信する顔が、寂しそうにしている。

「……うん、そうだね。賢人を想いながら選ぶんだもん。
きっと、気に入ってくれるよね。」

「ああ。」

「楽しみにしててね、賢人。」

角を曲がった頃には、賢人にはもう、笑顔が戻っていた。