笑顔が、少し歪んでいた。

それはそうだ。

付き合っている間の事、全部忘れたなんて言われたら、傷つかない人なんていない。

「……珠姫とは、大学生の時に出会ったんだ。君が1年生で、僕が3年生の時だった。出会って直ぐに、付き合い始めたんだよ?」

「そう……」

「教育学部だった。二人とも、教師を目指してた。」

教師?

私が学校の先生を、目指していた?

「賢人は、教師にならなかったの?」

「教員免許は取ったんだけどね。雇ってくれる学校が、なかったんだ。」

賢人は、そう言って『ハハハッ』と笑った。

「私は……仕事は何してた?」

情けないけど、自分が何をして生活費を稼いでいたのか、それすらも覚えていない。