「わっ!」

「きゃっ!!」

後ろから肩を叩かれ、思わず大きな声を出してしまう。

振り返ると、そこには迎えに来た賢人が、立っていた。

「ぼーっとして、どうしたの?」

「えっ、ああ……」

読んでいた本を、そのまま膝の上に置いて、私は天井だけをじっと、見つめていたらしい。

「今日のリハビリ、そんなに大変だったの?」

「ううん。いつもと一緒。」

私は、読んでいた文庫本を、バッグの中に入れた。

「それとも、さっき話していた看護師さんに、何か言われた?」

私は手を止めて、賢人を見た。

「話してるの、見てたの?」

「うん。」

「来てくれたら、よかったのに。」

「なんだか、大事そうな話をしていたから。」

私が立ち上がろうとすると、賢人は手を取って引いてくれた。

「さあ、行こう。」