「ご家族って、人生の大半を一緒に過ごしてきた方達でしょう?それを思い出したって事は、人生の大半を取り戻したって事ですよ。」

「後藤さん……」

「大丈夫ですよ。焦らずに、ゆっくりいきましょう。」

「……はい。」

そう言って後藤さんは、また仕事に戻って行った。


“焦らずに”


家族の事を思い出すまでは、その言葉を聞くだけで、心の中がざわついた。

でも今は、私には賢人がいる。

一人じゃないと、心から思える。


私は光が差し込む、二階の窓を見上げた。

夏が終わり、秋が始まる今頃は、日差しもいくらか和らぐ。

「そうだ……賢人の誕生日、今ぐらいじゃなかったかしら。」

曖昧な記憶。

しかし、柔らかい日差しの中に、誕生日プレゼントを買いに行く自分が、頭を過る。