「松葉杖をついていないと言う事は、大分回復されたんですね。」

「はい、お陰さまで。まだ少しだけ足を引きずりますけど、歩けるようになりました。」

「それは、よかった。」

退院しても、こうして身体の事を、気にかけてくれる人がいると言う事は、有り難い。

「……過去の事は、何か思い出しましたか?」

少々、遠慮がちに聞いてきた後藤さん。

たぶん、入院中は何も思い出せなかった為、気を使っているのだろう。

「はい。家族の事を思い出しました。」

「そう!」

安心したように、笑みを浮かべる後藤さんの顔を見ると、こっちまでほっとした。

「まだ断片的なモノばかりで、肝心の事故の事は、思い出せないんですが……」

「いいんですよ。」

後藤さんは、私の手を握ってくれた。