私が名前を呼ぶと、嬉しそうに顔を上げた。

「あの……ごめんなさい。思い出したとか、そう言うんじゃなくて……」

そしてまた、頭が痛くなる。

「いいんだ。お医者さんも言ってただろう?無理に思い出す事はないって。」

「うん……」

頭痛が治まると、私はまた賢人君を見た。

「賢人は……普段、何をしている人なの?」

「僕は、普通のサラリーマンだよ。」

彼はそう言って微笑むけれど、その笑顔に見覚えはない。

私は目線を、賢人から天井に移した。


「私達は、付き合ってどれくらいなの?」

賢人は、ゴクンと息を飲んだ。

「ごめんなさい。私、何も覚えていなくて……」

「いいんだ。気にする事はないよ。」