「そうだ。今日は、珠姫の大好きなカレーにしようか。」

「うん。」

「ここに座ってて。俺が作るから。」

賢人は私の背中をポンッと叩くと、キッチンへ向かって、買ってきた物を冷蔵庫へと入れた。


今更ながら、賢人が側にいてくれて、本当によかったと思った。

でも、事故に遭ってから、何度も何度も感じていた事。

その度に、賢人を信じよう信じようと、心に誓って。

それでも何かが、賢人を信じきってはいけないと、私に囁く。

それは、何なのか。

考えても考えても、それは底のない沼にように、辿り着けないモノ。

伸ばしても伸ばしても、手の届かないモノにように、それは感じた。


「はい、できたよ。」

「えっ?」

いつの間に、そんなに時間が経ってしまったのか。

「珠姫が考え事している間に、出来上がったよ。」