廊下を見ると、買ってきたトマトが転がっている。

「ごめんなさい。驚かせて。」

「いいんだ。怪我がないなら。」

賢人は松葉杖を側に置いて、廊下に戻った。

何もかも、賢人に迷惑を掛けて。

ふぅーっと、息をついたその時だった。

手元に、何かの感触を感じた。


ああ、きっとこれに躓いたんだ。


私は、それを拾った。

写真立て?

私は裏面を返すと、その写真に釘付けになった。


両親と私が写っている写真。

3人家族。

私は一人っ子だった。


「あ……」

そして、次々と頭の中を駆け巡る映像。

社会人になってから、父が病気で亡くなり、母も後を追うように、病気で亡くなった。

住んでいた家は、母が生活の為の借金の返済に当てる為売り払い、私はこの借家に越してきたのだ。

たった一人。

たった一人で、生きて行く為に。