賢人と、久々に見つめ合う。

病院では他の目があったから、頬にキスするしかできなかったけれど、今は他に誰もいない。


私は、目を閉じた。

「珠姫……」

賢人の顔が近づいてくる。

でも、賢人は私の唇に、口づけてくれなかった。

「賢人?」

「あっ……ごめん。まだ、早いよ。」

「えっ?」

「退院したばかりだし。キスだけで、抑えられそうにないんだ。」


何ヵ月振りかで、体の火照りを感じた。

賢人に抱かれたい。

でも、婚約してるんだもの。

何も躊躇う事なんて、ないのに。


「ごめん。本当にごめん。」

賢人は立ち上がって、自分と私が飲んだお茶のコップを、キッチンまで持って行った。

キッチンでは、シンクの中にコップを入れて、呆然と立ち尽くす賢人がいた。