「はい、珠姫。」

賢人は冷えたお茶を出してくれた。

「これ、いつの?」

「心配しなくても大丈夫。二日前だって。」

「二日前?」

「掃除したのが、二日前だから。」

「つい最近じゃん。」

賢人と一緒に、一息ついて。

私はほうっと、小さく息を吐いた。


「有り難うね、賢人。」

「何?急に。」

「賢人がいなかったら、私、潰れてた。」


目が覚めて。

自分の事、何もかも分からなくて。

思い出そうとしても、思い出せなくて。


記憶喪失だと言われて。

婚約者の賢人まで、疑って。

自分には身よりがないって言われて。


どんな時でも、側には賢人がいてくれた。


「僕は何もしていないよ。珠姫が、頑張ったんだ。」

「それでも、賢人がいなかったら、私だって頑張れなかったよ。」

私は賢人に、寄り添った。