しばらくして、私は退院し、自宅に戻って来た。

私の家は、一階建ての借家だった。

「もしかして、私達一緒に住んでいた?」

「うーん……厳密には住んでいないけれど、週の半分はここに泊まっていたからね。半同棲みたいなもんさ。」

賢人はキーホルダーから、合鍵を取り出して、少しおぼつきながら、玄関の鍵を開けた。

「さあ、入って。」

玄関を開けてくれた賢人は、まるでイギリスの紳士みたいだった。


「珠姫が入院している間、一度だけ掃除したんだけどさ。足りなかったらごめん。」

「ううん。それだけでも、感謝だよ。」

廊下に上がり、直ぐの部屋がリビングになっていた。

対面キッチンになっていて、結構広い。

「座って。なんか飲み物持ってくるよ。」

賢人はまるで、自分の家のように、振る舞った。

一方の私は、まるで他人の家に、遊びに来た感覚。