自分が誰なのか、分からない。

すぐ側にいる人も、分からない。

何で?

どうして!?


「記憶……喪失?」

私はそっと、布団から顔を出した。

「……記憶喪失って、何で?何で、私がそんなモノになるの?」

「事故の時に、きっと頭を強く打ったんだよ。もうすぐ先生が来るから。」

賢人がそう言った矢先、主治医の先生が、病室を訪れた。

先生は私の顔を見ると、ペンライトを取り出した。

「少し眩しいですからね。」

目の上で、何度も何度も、ペンライトを行ったり来たり。

「瞳孔は、大丈夫ですね。ここがどこだか、分かりますか?」

主治医の先生が、私に問いかける。

「……病院です。」