振り返ると、知らない顔。

いや、記憶がないだけで、私の知っている人達なのかもしれないと思った。

「無事だったんだね。」

ご主人の方も、涙ぐみながら言った。


「あのー、すみません。」

私が申し訳なさそうに声を掛けると、二人は慌てて、立ち去ろうとした。

「そうね、記憶がないんだもんね。」

人の口から聞くと、心が傷つく。

好きで無くした訳でもないのに。

「いいんだよ。今は、ゆっくり養生して、それから結婚すればいいんだ。」


結婚!

その言葉がキーワードのように、私の全身を駆け巡った。

「賢人の、ご両親ですね。」

二人は顔を合わせると、立ち止まった。

「ええ……」

「すみません、お聞きしたい事があるんです。」