「うん。」

「もっと、僕を頼ってよ。」

震える声。

私は、後ろを振り返った。

「これでも、僕の事覚えていないって言われて、ショックなんだ。その上、信用もされてない、頼ってもくれないなんて……」

「違う……違うの!」

私は賢人の腕に、しがみついた。

なのに、その後の言葉が出て来ない。


「珠姫?」

頼っていない訳じゃない。

信じてないわけじゃない。

でも、何かが違う気がするのは、どうしてなんだろう。


「ねえ、賢人。私、怖いの。自分が自分じゃないような気がして……」

賢人は、私を抱き寄せた。

「珠姫は珠姫だよ。他の誰でもない。今の自分を、そのまま受け入れていけば、いいんだよ。」

何度も何度も、賢人は私を励ましてくれる。

今の私は記憶がないと言うだけで、怯えて、前に進めなくなっている臆病者だ。