先生と看護師さんが病室を出た後、賢人は静かにカーテンを閉めた。

「まだ……僕の事を疑ってる?」

賢人は元気が無さそうだった。

「ううん。ただ……婚約するくらい好きだった人を、こんなにも簡単に、忘れるものなのかなって……自分が情けないと思うだけ。」

「それが……記憶喪失って言うものなんじゃないの?」

「うん。」

賢人はそう言うと、病院のパジャマを、私に持って来てくれた。

「新しい物に、着替えよう。」

「そうだね。」

まだ起き上がれない時でも、賢人はこうして、私の着替えを手伝ってくれていた。


「珠姫。これからの事、そんなに心配する事ないよ?」

賢人が後ろから、囁くように言い聞かせてくれる。

「退院した後も、僕が珠姫の面倒みるし。仕事だって、ゆっくり探せばいいんだ。」