数日が経って、私はベッドから起き上がる事が、できるようになった。

「じゃあ、明日からリハビリをしましょうか。」

主治医の先生が、次のプログラムを、私に伝えた。

確実に退院に向かって、体は回復していると言うのに、記憶は何も戻っていない。

「先生。」

「はい。」

「もし、私の記憶が戻らない場合でも、歩けるようになれば、退院するんでしょうか。」

「うーん……」

先生は少し考えながら、カルテを見た。

「脳には異常はないですし。記憶は、普段の生活をする事によって、早く思い出す場合もあるんですよ。」

「はあ……」

「何度も言うように、焦らない事です。」

先生が言う事は、いつも同じ。


“焦らない事”