「津山さんも、その事を薄々気づいているんだと、思います。だから、あなたにもそう言ったんでしょう。」


良人の『珠姫を越えるぞー!』と、張り切っている姿が、鮮明に思い浮かんだ。

「それでは、失礼します。」

トレーナーは、それ以上何も言わずに、私から去って行った。



『珠姫!危ない!』

良人は事故直前、シートベルトを外せなくて、焦っていた。

彼を助けに行ったけれど、トラックは容赦なく迫ってきて。

逃げろと言ってくれたのに、私は怖くて逃げる事ができなかった。

良人はそんな私に、覆い被さってくれて、私の怪我を最低限に抑えてくれた。

自分の体を、犠牲にしてまで。


「良人……」

涙が溢れて、止まらなかった。

自分は、悪魔かと思った。

こんな私が、幸せになんて、なれる訳がない。

私はフラフラとさ迷いながら、病院を出た。