良人はそう言いながらも、次から次へと、カレーを口に運ぶ。

「少し食べる?」

「ええ?」

残り一口、二口で、良人は急に、スプーンを私に差し出した。

「珠姫もカレー好きでしょ?」

「そりゃあそうだけど……」

ふと、賢人の言葉が、頭を過った。





『今日は、珠姫の好きなカレーにしようか。』



カレールーの箱を見せながら言ってくれた、賢人の笑顔を思い出す。

もう二度と、あの笑顔は見れないと言うのに。


「また、賢人の事。思い出していた?」

「えっ?」

跳び跳ねる程驚いて、私は目を反らした。

良人が賢人の名前を出すのは、何日ぶりだろ。

また、有らぬ疑いをかけられるのかと思うと、手が震えた。


「この前、『賢人、元気だった?』って、珠姫言ってたろ?」

「う、うん……」