「僕だって、最初はいけない事だと思った。良人の……愛している人の、恋人の振りをするなんて。」

「じゃあ、どうして!」

「眠っている珠姫を見て、耐えられなかったんだ!良人は、このまま意識が戻らず、寝たきりになるかもしれないって言われて……」

「良人が……寝たきり?」

意識が遠くなって、私はフラッと一歩、後ろへ下がった。

「だから、せめてこのまま、良人が目を覚まさないのなら、僕が良人の代わりに、珠姫を幸せにしようと思ったんだ!」

目の前がグルグル回って、私はとうとう床に、膝をついた。

「だからって、やって良いことと、悪いことがあるわ!」

私は、叫ばずにはいられなかった。

「もし本当に!良人が目を覚まさずに、私が賢人と結婚すると言ったら、どうしてたの!?」

「……結婚してたよ。」