付き添っていたお父さんも、涙を堪えきれず、溢れる涙を手で拭っていた。

「当たり前だろ……珠姫を置いて、先に死ねるかよ。」

掠れた声で、その人は呟く。

「良人……」

私は、良人の手を握った。


「ごめんなさい。私、今まで全然、ここに来れなくて。」

「いいんだ。聞いたよ……珠姫も、記憶が無くなっていたんだって?」


目が覚めたばかりなのに、私を気遣うなんて。

「良人………」

どうして、私はこんなにバカなんだろう。

良人の事を、ずっと忘れていたなんて。

「珠姫?」

「珠姫さん?」

良人もご両親も、私が突然泣き出して、驚いている。


「うわあああああ!」


賢人に抱いていた違和感。

それは、同じ人であって、同じ人ではない。

その記憶が、私の奥底で、燻っていた証拠。