【主な登場人物紹介】

[幼い頃のカムラ]=蓮姫 new
自称 わたし

[カムラのおばちゃん]new
自称 おばあちゃん
蓮姫《カムラ》の血縁の祖母。
いなくなったカムラの実の両親の代わりにカムラを育てている孫思いの優しいおばあちゃん。
カムラの実の両親がいなくなった理由を知っているようだがカムラ本人には話していない。

[蓮姫のお母さん]new
自称 私
家出をし、行く宛の無くなったまだ幼い
カムラを引き取り育ててきた里親。
貴族の王族で、
家は裕福だが、他人を思いやる性格の優しい女性。

※登場人物紹介おわり
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『……ラ…………カムラや。 カムラ。
そこじゃ風邪引くよ。こっちへおいで』

『おばあちゃん』

『他の話も聞かせてあげるから』

『ほんと~? わかった。そっちいく!
他の話、聞かせて~!』
おばあちゃんはわたしが寝る前にはいつも、
村に古くから伝わる民話を語り聞かせてくれたの。
わたしはそのの時間がとっても大好きで、
毎日その時間が楽しみだったわ。

『……その青年はある日、ゴホ! ゴホ! ゴホ!』

『おばあちゃん! 大丈夫?』

『心配させてごめんね。おばあちゃんは大丈夫だから』

『おばちゃん……?』
おばあちゃんの身体の調子が良くない日はね、
最初はたまにだったんだけど、だんだん増えていったの。

『カムラごめんね。 おばあちゃんね、今日は疲れていて
お話聞かせてあげること無理そうなの』

『嫌だ~! おばあちゃん、お話聞かせて~!』
その頃のわたしはまだ老いるっていう意味がよくわからず、体調の悪いおばあちゃんに無理を言ったものだわ。

わたしはその頃、おばあちゃんと二人で暮らしていたの。
わたしには本当のお父さんとお母さんの記憶が無くて、
物心ついた時におばあちゃんに聞いたんだけど、
二人は長い旅に出ているとしか教えてくれなかった。

わたしが12才になった年、ある日突然おばあちゃんがわたしに話しかけてくれなくなったの。
わたしが何度話しかけても返事をもらえなかったから、
呪術に詳しい村の長《おさ》の爺《じいじ》に汚《けが》れを払ってもらうようお願いに走ったわ。
でもね、爺はおばあちゃんの姿をみても汚れを払おうとはしなかったの。
そして、おばあちゃんは生まれ変わるために長い旅に出るんだって……。
爺は涙を流しながら喜んでいたわ。
そして、おばあちゃんは村人の手でどこか遠くに連れていかれて、わたしが何度お願いしても二度と会わせてくれなかった。

わたしはその後、長の息子夫婦の家に預けられたんだけど、
その時のお父さんは乱暴で家族に暴力をふるう人だったの。
お母さんはわたしをかばってくれたけど、
わたしより1つ歳が上の実の息子のほうばかりいつも大事にしていたから、わたしは居場所が無くて辛くて仕方なかったわ。

そしてわたしは家出を決意したの。
でも、家出をして身寄りがない子供の孤独感をすぐに痛いほど痛感したわ。
『わたし、寂しいよ。おばあちゃん……』
土砂降りのスコールから逃れる為、
わたしは路地裏の雨避けが出きる場所をみつけ、そこにじっとしていたの。

実際は家出をした日から1日しか経っていなかったんだけど、
わたしにはそれが何日にも感じられたわ。

そして、今の大好きなお母さんが現れたの。
お母さんは凄く綺麗な服を着ていて、
わたしはそのお母さんに連れられて家に行ったんだけど、
その目を疑ったわ。
そこはもの凄く大きなシャンテ王の宮殿だったの。

身分のわからないわたしを何故レージャーニアの寝居に連れてきたんだ~!
って最初お父さんはお母さんに怒っていたけど、
お母さんが説得してくれたおかげで、
わたしはお母さんの娘のお姫様として王宮で暮らせることになったわ。

でも、お父さんや兄弟達は拾われたわたしに対してあからさまに
嫌な顔をしたり避けたりして差別したわ。
召し使い達も、わたしがいないところでは酷いことをいつも言っていたの。

でもね、お母さんだけは違ったわ。
わたしに厳しい時もあるけど、優しいときもたくさんあったから。
だからわたしはお母さんのことがとっても大好き。

お母さんは、昔おばあちゃんがわたしに話してくれたみたいに
寝る前に不思議な民話のお話を聞かせてくるから、
毎日その時間がくるのが凄く楽しみだったわ。

あれから3年が経って、わたしはもう15歳。
最近、お母さんはガイコウ問題とかでお父さんと頻繁に出かけて、何日も帰って来ない日が多くなってきたの。

わたしが心を開いて何でも話せる人はお母さん以外はいなかったから、本当に辛くて寂しかったの。

だから一昨日ね、わたしはお母さんに叩かれて、
つい言ってしまったの……

『あんたはどうして……。どうして勝手に王宮を抜け出したの?
私だけじゃないのよ! お父さんや王宮の人達がどれだけあなたのことを心配して、必死で探し回ったと思っているの?』

『私はただ……、会いに行きたかったから』

『会いにって、まさか私に内緒で動物でも飼っているって言うの?
あんたって子は本当にもう!』

『違うってば!
王族育ちでなに不自由無く生きてきたあんたに
私の気持ちなんてわかるの?
私の本当のお母さんでも無いくせに、
こんな時だけ母親 面(づら)しないでよ!
大っ嫌い! 』

大っ嫌い!

大っ嫌い!

大っ嫌い!

「はっ!?
…………」

蓮姫が走馬灯のような思い出から目が覚めると、
また白く眩しい光に包まれた。

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※カムラ(蓮姫)のモデル
チャンドラグプタ

インドのカーストの中で最下位シュードラの出身であるとされ、仏教系の文献ではクシャトリアの出身であるとされている。
これはマウリヤ朝が仏教という、当時のインド世界においては非正統派に属した宗教を保護したために、バラモン教の高位者たちがその王を軽視したことによるといわれるが、正確な所は分からない。当時マガダ国では、ナンダ朝の急進的な政策のために身分秩序が乱れており、チャンドラグプタが台頭したのはそういった状況下においてであった。