『サッ…』
何かが擦れるような音がした。
『?』
疑問に思い音のする方を見る。
ハンカチだった。
すると目の前には同い年程の女が居た。
その女が持っているバッグとの
セットらしきデザインが、
ハンカチにはされていた。
女はどうやらハンカチを落とした事に
気付いていないようだったが、
どう考えても自分にはこのハンカチが
この女の物としか思えなかった。
自分がどれだけコミュ障で
人見知りであっても、
流石にこれは見逃せなかった。
俺は勇気を出して女に声をかけた。
『あの、すみません。
ハンカチ落としましたよ?』
すると女は気付いたようで、
俺の方に振り返った。
『あ!それは!ありがとうございます!』
振り返った女は、
俺が差し出したハンカチを受け取り、
こう、返してきた。
『あの、すみません、
何かお礼を…取り敢えず電話番号…
メモ…メモ…ペン…手帳…あれ?』
あたふたしていて、
女は落ち着きがないようだった。
其れを見る限り、女は何だか、
放って置けないタイプの人間に見えた。
『あの、メモとペン有りますけど…』
と、うっかり手を
差し出してしまったのも、
自分でも無理ない事だと思える。
『あ!本当、色々ありがとうございます!
えーと…はい!書けました!
あ、何時位暇ですか?』
と、メモを差し出しつつ、
女が俺に聞いてくる。
『あ、今日仕事なので、
まぁ…11時位からなら確実に大丈夫です』
女慣れしてない俺はオドオドしつつ、
何とか返事をする。
『じゃあ、今日の11時位に連絡します!』
そう、笑った女の顔は、
少しだけ可愛かった気がした。