三年間クラスメイトで、出会った直後に仲良くなって、気づいたときには好きになっていた私の初恋の人。卒業式の日、伝えようと決めていた想いは届けることができなかったまま、十年経った今もなお私の心の中でずっと眠っている。
まるで、いつか伝えられる日が来ることを待っているかのように。もうそんな機会が巡ってくることは二度とないと頭ではわかっているのに、心に居座った恋情はあの頃からずっと色褪せていないような気さえする。

あの日、遼にこの気持ちをちゃんと伝えることができていれば、彼は死ななかったのだろうか。告白が実ることがなかったとしても、遼とここで再会できたのだろうか。

この十年、私は自分自身に何度も同じことを問いかけてきたけれど……。現実はなにも変わらないまま、私だけが十年分の月日を歩んで二十五歳になってしまった。

「ごめんね、遼」

小さく漏らした声に目の奥から熱が込み上げてきて、また後悔が色濃くなる。告白できなかったことも、現実を直視できなくてお通夜にもお葬式にも行けなかったことも、あの頃から何度も何度も悔やんできた。
それでも、まだ足りないと言わんばかりに後悔は募っていく。

「十年経ってもこんなに好きなのに、どうして言えなかったんだろうね……」

想いが褪せないのは、後悔のせいだと思っていた。だけどきっと、それだけじゃない。
私は、自分自身が思うよりもずっと、遼のことが本当に大切だったのだ。


あの日――。
卒業式の夕方、告白できなかったことを励ましてくれた友人たちと別れて帰宅した私は、その一時間後に掛かってきたクラスメイトからの電話を受けて病院に走った。自然と溢れ出していた涙が後ろに流れていくのを感じながら遼が無事であることを必死に祈り、街灯に照らされた道を駆け抜けて病院に辿り着くと、そこには擦り傷だらけの遼が眠っていた。

致命傷になったのは、頭を強く打ったこと。もう息をしていないと誰かから聞かされたとき、目立った外傷は擦り傷しかなかったせいか、その言葉を信じられなかったけれど……。彼の家族やいつもふざけてばかりいる男子たちが声を上げて泣いている姿を見て、目の前が真っ暗になるのを感じた。

お通夜にもお葬式にも参列しなかった私は、現実を信じられないままだったけれど、悲しみに暮れる心が零させる涙はずっと止まらなかった。
そんな中、父の転勤で三月末に遠く離れた九州に一家で引っ越すことがこの二ヶ月前には決まっていたから、泣きながらも荷造りを進めなくてはいけなくて……。段ボールにたくさんのシミを作りつつも、なんとか作業をこなした。

そして、遼が亡くなってからちょうど一週間後。泣き叫ぶような大雨の中で住み慣れたこの街を離れ、そのまま今日まで一度も足を踏み入れることはなかった。