程なくして、再び視線がぶつかった。
「正直、なに言ってるんだって思う」
信じてもらえなくて当然だとわかっているけれど、真剣なやり取りの中で好きな人に信じてもらえないのは、思っていた以上に胸が苦しかった。
「でも……」
そんな私に続けて投げかけられたのは、どこか落ち着いた声音。
「美咲は、理由もないのに人を困らせるようなことは言わないよな……」
困惑を隠さずに私を見つめている遼は、「まったく意味はわからないけどな」と不安の混じった瞳で微笑する。そして、それらの感情を顔に残したままの彼が、ゆっくりと息を吐いたあとで「詳しく聞かせてくれ」と言った。
「信じてくれるの?」
涙で濡れた瞳で遼を見上げれば、複雑そうな笑みとともに頷かれる。
「言っただろ。美咲は、こういうことは言わない。マンガみたいでバカげてるって思うけど、お前の顔を見てると嘘だとは思えない。だから、信じるよ」
「遼……!」
「だって、美咲は親友で……今日からは、俺の彼女だもんな」
涙が再び零れ、ポタポタと落ちていく。そんな私の背中に、そっと温もりが添えられた。
「大丈夫だ、俺は死んだりしない。せっかく美咲と両想いだってわかって、付き合えることになったんだからさ」
それが遼の手だと気づいたのは、直後のこと。今は私が年上で、彼の方がずっとずっと不安なはずなのに、優しい笑顔を見せてくれる。その強さに、胸の奥が震えた。
「こんな日に死んだら成仏できそうにないし。ほら、浮遊霊ってやつ? あれになるのはごめんだね」
どこかおどけたように笑う遼につられて、微かな笑みが漏れる。
「それに、俺はまだまだやりたいことがたくさんある。高校でもサッカーをやって、いっぱい遊んで、バイトもして、美咲とデートもしたい。水族館とか遊園地とか、九州旅行もいいな」
当たり前のように未来のことを話す遼は笑顔だけれど、瞳は揺れている。必死に明るく努めている彼の優しさに気づいて、伸ばした右手で私よりも大きな左手をギュッと握った。
「うん……私も遼とたくさんデートしたい。いっぱい遊びに行って、数え切れないくらいの思い出を作りたい」
未来では叶えることはできなかった、私の夢。だけど、今ならきっと叶えられるはず。
そう信じて左手で涙を拭い、精一杯笑って見せた。
「遼は私が守るよ」
自然と零れた想いに、一瞬だけ驚いたように目を丸くした遼が苦笑する。
「そういうのは、男の俺の台詞だろ?」
「いいじゃない。私だって、遼を守りたいんだもん。きっと、そのために未来から来たんだと思うから……」
「……そうだな」
彼は小さく頷くと、私たちの傍で見守るように立っている桜の木を見上げた――。
「正直、なに言ってるんだって思う」
信じてもらえなくて当然だとわかっているけれど、真剣なやり取りの中で好きな人に信じてもらえないのは、思っていた以上に胸が苦しかった。
「でも……」
そんな私に続けて投げかけられたのは、どこか落ち着いた声音。
「美咲は、理由もないのに人を困らせるようなことは言わないよな……」
困惑を隠さずに私を見つめている遼は、「まったく意味はわからないけどな」と不安の混じった瞳で微笑する。そして、それらの感情を顔に残したままの彼が、ゆっくりと息を吐いたあとで「詳しく聞かせてくれ」と言った。
「信じてくれるの?」
涙で濡れた瞳で遼を見上げれば、複雑そうな笑みとともに頷かれる。
「言っただろ。美咲は、こういうことは言わない。マンガみたいでバカげてるって思うけど、お前の顔を見てると嘘だとは思えない。だから、信じるよ」
「遼……!」
「だって、美咲は親友で……今日からは、俺の彼女だもんな」
涙が再び零れ、ポタポタと落ちていく。そんな私の背中に、そっと温もりが添えられた。
「大丈夫だ、俺は死んだりしない。せっかく美咲と両想いだってわかって、付き合えることになったんだからさ」
それが遼の手だと気づいたのは、直後のこと。今は私が年上で、彼の方がずっとずっと不安なはずなのに、優しい笑顔を見せてくれる。その強さに、胸の奥が震えた。
「こんな日に死んだら成仏できそうにないし。ほら、浮遊霊ってやつ? あれになるのはごめんだね」
どこかおどけたように笑う遼につられて、微かな笑みが漏れる。
「それに、俺はまだまだやりたいことがたくさんある。高校でもサッカーをやって、いっぱい遊んで、バイトもして、美咲とデートもしたい。水族館とか遊園地とか、九州旅行もいいな」
当たり前のように未来のことを話す遼は笑顔だけれど、瞳は揺れている。必死に明るく努めている彼の優しさに気づいて、伸ばした右手で私よりも大きな左手をギュッと握った。
「うん……私も遼とたくさんデートしたい。いっぱい遊びに行って、数え切れないくらいの思い出を作りたい」
未来では叶えることはできなかった、私の夢。だけど、今ならきっと叶えられるはず。
そう信じて左手で涙を拭い、精一杯笑って見せた。
「遼は私が守るよ」
自然と零れた想いに、一瞬だけ驚いたように目を丸くした遼が苦笑する。
「そういうのは、男の俺の台詞だろ?」
「いいじゃない。私だって、遼を守りたいんだもん。きっと、そのために未来から来たんだと思うから……」
「……そうだな」
彼は小さく頷くと、私たちの傍で見守るように立っている桜の木を見上げた――。