「……じろじろ見ないで、舞原」

ーーーなぜか僕だけご指名だ。

いや、本当に何で僕だけ?

こいつもそいつも、みんな見てるじゃないか。

「……見てない。気のせいだろ」

あまりの理不尽さについ不躾な声が出てしまう。

高遠は更に不愉快そうな目付きになった。

「うそつき」

「ついてない。見てない」

……本当は見てたけど。

「そんなことない。舞原はうそつきよ」

「しつこい。うそなんてついてねえっての」

「………」

じっと、僕をにらむ高遠。

やがて数秒ののちふんっと思い切り顔を背けた。

それからわざとらしく次の時間の教科書をひらくと、バリケードのように自分の顔をかくしてしまう。

僕の周りの友人たちから『やれやれ』とため息がもれた。

「相変わらず嫌われてるな、高遠に」

「別に。なんなの、あれ。俺なんかした?」

「さあ?舞原の顔が不快なんじゃね」

「うっせ。お前よりマシだっての」

「ははっ、鏡みてから言えよ」

友達とそんな軽口を言い、笑い合うものの、モヤモヤしたわだかまりのようなものは消えない。

高遠の僕への態度。

もともとクラスメイトに対し、クールというか素っ気ない感じの高遠だけど。

僕にはそんなものを通り越して、嫌悪感丸出し……明らかに僕を嫌っているようなのだ。