目に映ったのは白い日傘。

裏門からグラウンドを通りこの校舎に入ってくる。

夏の太陽に照らされた傘の白は、まぶしいくらいに光って見えた。

……ちなみに僕らのいる二階の窓からだと開いた傘に遮られ、持ち主の顔は見えない。

それでもあれが『高遠きらり』だとわかるのは、彼女はほとんど毎日あの白と共に登校してくるから。

ーー高遠はいつも日傘をさしている。

もっとも日傘が校則で禁止されているわけではないし、この猛暑だ、暴力的ともいえる日差しを防ぎたいと考えるのは至極当然のことかもしれない。

だが、高遠は大して暑くない日でも、それこそ春だろうが秋だろうが日傘をさして来ていた。

しかも制服はいつも長袖。どれだけ暑い日でも、だ。

もちろん肌が弱いとか色々な事情があるのかもしれないから、みんなそれを悪く言ったりはしないけれど。

人とちょっとだけ違う高遠の行動は、彼女への好奇心を抱かせる理由には十分だった。