「あ、あの、か、返してよ、舞原!からかわないで!言っておくけどね、今日のあなたの絵よりは私の絵の方がマシだから」

高遠が僕の手から絵を奪い取る。

真っ赤な顔に、軽くギラギラした目。

いつものクールさはどこに行ったのか。

「悪かったよ。でも馬鹿にした意味で笑ったんじゃないから」

「ど、どうだかっ!……私は真剣に描いたんだからね」

「……そう」

………真剣にか。

それなら高遠の言う通り、彼女の絵の方が僕の絵の何倍も優れている。

「高遠」

「なにっ」

「………ごめん」

「っ……?」

その謝罪は高遠の絵を笑ったことに対してではない。

僕は今日の絵を全く心あらずで描いた。

だからモデルである彼女に謝罪したのだ。

でもそんなこと説明もなく高遠に伝わるわけもなく、彼女は『別に』と小さくつぶやくと、僕に背を向け行ってしまった。

これで彼女とのペアも終了というわけだ。

(……思ったより、話したな)

決して仲良くなったわけではないけれど。

またこんな機会はあるだろうか。

僕はそれを望んでいるのか、それとももううんざりなのか。

よくわからなかった。