美術教師はそんな嫌みを置き土産に去っていった。

なにが天才だ。

今の僕の状態を知っているくせに。

「……はあ。美術は明日か」

木曜の午後授業。

いつもは仮病やなんやで適当にサボっていた。

でもこうなってしまったら今回はでないといけないだろう。

「気が重いな……」

ため息をついて、また廊下を歩き出す。

ふと前を見ると、高遠が教室から出てくるところだった。

彼女は僕に目を向けると、すぐにわざとらしく顔を背けた。

ふん、という声が聞こえてきそうだ。

……なんなの、あの人。まじで。

胸の中でつぶやく。

ただでさえ重い気分が、さらにずぶずぶと沈んでいくのがわかった。

* * *

……なんなの、この人。まじで。

目の前に座り、まっすぐこっちを見つめる高遠に対し、密かに心の中でつぶやいた。

翌日。美術の時間。

絵の具のにおいが漂う美術室で、僕と高遠は向かいあっていた。