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────それはあまりに眩しかった。
白い太陽光が突き刺し、蝉の声はうるさかった。窓を開けた瞬間飛び込んで来た眩い光と夏の音に目がくらみ瞳を閉じる。おそるおそる次に瞼を開いたとき、思わずシャッターを切っていた。
反射的だった。その瞬間を逃してはならないと誰かがどこかで言った気がした。
宙を舞ったその影が大きな水しぶきをあげてきらきらとひかる煌めきの中に消えていった。ほんの一瞬のことだ。瞬きをしていたらその姿を目に捉えることなんてできなかっただろう。
心臓がどくどくと音を立てているのがわかった。シャッターを切ったカメラを下すことなく、カメラレンズ越しに颯爽と水の中を泳いで行くその姿を見ていた。
「あれって、もしかしてシュンの幼馴染?」
「え?」
抑えきれない衝動を必死に隠しながら、後ろにいたハヤカワシュンへと話しかける。第3校舎3階、写真部部室。この幽霊部員ばかりの写真部で、唯一ほぼ毎日部室へ顔を出している同い年。
「────スミ、ナツノのこと知ってたっけ?」
ナツノ。東出夏乃。名前だけは知っている。いい噂は殆ど聞かないけれど、容姿が整っている点で男子の間では人気だった。けれど、全く気になんてしたことがなかったのに。
「いや、初めて見た」
「ああ、そういえばここからプールがよく見えるからね」
「……綺麗だな」
「なにが?」
「シュンの幼馴染、ナツノ、って子」
「ああ、男癖わるいけどね」
「そんなふうに見えないけど」
「傷跡を埋めてるんだよ、ナツノは」
「なんだそれ」
「スミにはわかんない話」
人生で初めて、心を打たれた。誰かが泳ぐ姿を見て泣きそうになるなんて思わなかった。
今後もし、彼女と関わることがあれば、できるだけ傷付かずにいて欲しいと思った。それぐらいに心臓が掴まれて逃げられそうにない。我ながら恥ずかしいけれど、一目惚れというやつだったんだろう。それは容姿にではなく、彼女の真摯に泳ぐ、その姿に、だ。
まるで、サカナみたいだ。透き通った水の中を、いとも簡単に泳いで行く熱帯魚。
ひどくうつくしかった。────とても、きれいだった。
この世に写真に残せないものがあるのだと初めて知った。
─────17の夏。
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【きらめきのなかできみは消える 完】