ひと通り話を聞き終えた黒い瞳の青年は、ふとした疑問を口に出した。





「その王子は、どうなったのだ」

「純真無垢な姫君はだませたが、政治はうまくはいかなかったようだ。役人の賄賂の横行、数々の不祥事に国民の不信を買い最後は、信頼していた部下の一人に首を切られ死んだそうだ」




銀髪の男はグラスに口をつけ、傾ける。





「想いというのは厄介なものだ。どの方向であれ、今までにない気持ちに自分をさせる……それ以前に」




青年は呟いた。




「腹違いとはいえ、兄弟だ。おれには理解できんな」




黒髪の青年が生真面目に答えると銀髪の男は微笑し、うなずいた。




「そうだな。では、呑むとしようか」




水色の瞳が笑いグラスを煽る。



これが運命を決する最後の酌み交わしになること。




銀髪の青年が一粒のダイヤを所有していたことは、黒髪の青年は知らない。





『呪いのダイヤ』 終わり