「王宮の宝物庫にある、呪いのダイヤを知っているか?」




ここは城下町にある、とある酒場である。


外はすでに陽は落ち闇が広がっているが、店内は松明と蝋燭の明かりが灯っており木製の壁やテーブルを赤く照らしていた。


今日は満席で若い女給が忙しく、しかし笑顔で接客をこなしている。


銀髪と黒髪の二人の男が並んだカウンターにも、よく冷えた麦酒を満たしたグラスが今、運ばれて来たところだ。


女給にチップを渡した後、二人はグラスに口を付ける。


年齢は共に二十代後半といったところだ。

腰に長剣の入った鞘をぶら下げており、甲冑こそ身に着けていないが二人が騎士だという事がわかるだろう。




「いいや」




黒髪の男がグラスに口をつけ傾ける。

銀髪の青年は黒髪の友人の反応を面白そうに見つめ言葉を続けた。




「とある王国の腹違いの王子と王女が、恋に落ちた。それはそれは周りが目を背けたくなるほどの、仲睦まじさだったそうだ」




銀髪の男はグラスに目を落とす。




「しかし王子は最初から王女を殺すつもりで近づいていたのだ。自分の王位継承権を失うことを恐れてな」




黒髪の男は顔を動かし、銀髪の青年の横顔を黒い瞳に映す。

銀髪の青年は続ける。




「その王子は王宮に仕えていた呪術師を使い、王女に呪いをかけさせダイヤに閉じ込めたとされている」

「呪術師ね……」





興味なさげに呟き、黒髪の青年はグラスをカウンターへ置いた。