「ねー、これどうやってガスでんの!怖いーっ」
「上のレバー回して、そうそれ」
「声変になったー」
「誰だヘリウム吸ったやつ!」
文化祭当日。うちのクラスの出し物、アミューズメントパークは盛況らしい。
早くにヘリウムガスの注入を済ませた生徒がクラスの自分たちの持ち場に戻って作業してるみたいだけど、今は特別教室に人がごった返している。
クラスメイトが自分の分の風船に空気を注入しているのだ。
「日野、ちょっとやり方わかんない」
「はいはい」
いつもは他人に無関心なうちの彼氏も今日はいい仕事をしている。ええことや、とうんうん頷いて腕組みをしているとお前も働けと睨まれた。さーせん。
困っているひとを探す最中、一人の女の子がヘリウムガスの前で手をこまねいているのが見えた。すかさず歩み寄り、レバーを捻る。
「こうだよ」
「あっ、足立さん」
「お」
日野を誘った、立入さんだった。
彼女は私が来るって思ってなかったらしい。私もあなただとは思ってませんでした。どぞ、と立ち上がると、彼女は私を見る。
「………悪かったよ、足立さん」
「何が?」
「…」
「はよはよ。ヘリウムガス待機勢めちゃおりますのや」
急いでーって急かすとちょっと怒ってわかったよ、と言われた。何で怒ってんだろうと思いつつ、日野を見たらちょっと笑われた。お前は何で笑ってんだ。意味わからん。ベーっと舌を出すと変顔される。ハイクオリティ過ぎませんか。