必然的に。
おれは彼女になれないし、って日野は前を向きながら言う。
ふうんって返してから、ぽんと頭にクエスチョンマークが浮かぶ。
『彼女って何すんの』
『何もしなくていんじゃね』
『何もしないのに彼女なの?』
売り言葉に買い言葉、的にとんとん返事をしていた。ら、突拍子もなく日野が立ち止まる。自転車のスタンドを降ろして道端に停めると、ハンドルを持ちながら振り返った。
『じゃ、手始めにチューでもする?』
『げろー!きめぇ!』
『…お前そこそこひどいな』
ぺっぺっ、て舌を出してむりむりむり、と顔の前でばってんを作ったら日野は苦笑いするだけで、傷ついたのか、傷つけたのかは分からなかった。永遠の愛だとか、恋だとか、好きとか嫌いとかわからない。
でもあの日、この先も隣にいるのを悪くないと思ったんだ。
『よろしく彼女』
言葉になんか出さないけどさ。
そんな風に笑うから、日野も同じなんだと勝手に思ってたんだよ。
でもそれって、私だけだったのか。
❀
「………足立さん、それ、なに」
「藁人形」
今は自分の衣服に日野の毛髪が付いてないか探しているところ、とセーラー服やカーディガンをコロコロでバリバリしていると、やめなよ、と薮内くんに制止を求められた。
今時通販サイトAMEZONがあれば何だって手に入る。でもにっくき対象の毛髪までは無理なのだよ薮内くん。日頃あんだけ接近戦織り成してたんだ、毛髪の一つって思ってたのに無くてうー、と机を叩く。