全てが終わり渕脇は会長に就任した。
バーナ重工の権限は渕脇にある。

「華先生の助言のおかげだな」

会長室のデスクで渕脇は声に出さずに呟いた。
喫茶店で華は云ったのだ。

「噂を流しなさい」

バーナ重工業社内では、とあるそれが流れた。
それは獣医師の華と名乗る人物が某敵対企業重役とペットを通し内通していて、引き抜きや斡旋を行っている、と。
すると華の元へ高価な贈答品を持って訪れる人物が複数、現れたのだ。
華はそれを全て渕脇の元へ送り届けた。
渕脇は自分を陥れようとした人物、裏切り行為の証拠を手にいれたのだった。

渕脇はそれを元に調査を始め社内の反勢力の動きを掴み、ヒューマノイドを流出させた人物達の特定し告白したのである。

「茂澄臣吾専務取締役を、解雇とする」

茂澄一族に不満を抱いていた株主たちは、その決定に拍手した。
そして一族の左遷や自主退職を促し雇用関係の解消を『合法的に』実行した。


「社長の権力を正当に行使したまでだ。他の社員にまで危害が及ぶからな」

電子煙草を口にくわえる。
華を食事に誘おうとした渕脇だが、彼の専属秘書に声をかけられた。

「その役目、私じゃ駄目でしょうか」

秘書はペット可のマンションに住み、犬を飼っている動物好きなのだが華に興味を持ったらしい。
渕脇に秘書の葦澤攻を紹介された華は、カカカ、と笑った。

「物好きもいるわねえ」