有秀は病院に搬送された。
頭に銃弾を受け貫通はしているものの、意識はなく予断を赦さない状態だ。
処置を受けた少年はベッドに寝かされていて頭に包帯、酸素マスク、胸には電極、指にもプローブを付けている。
病院には鷹人、真吏の他に連絡を受けて駆けつけた志鳥も病室のベッドの横の椅子に腰かけている。

「鷹人、おまえのせいじゃない。そう追い詰めるな」

志鳥は義理の息子の肩を叩いたが、鷹人は無言だ。
真吏が青年を見つめる。
彼のせいじゃない。
それどころか、鷹人自身も危うい状態だったのだ。
鷹人はヒューマノイドと接触した事と逃した事実だけを話す。
首元にうっすらと残る鬱血痕に志鳥は気づいたが、追及はしなかった。

「何にしても有秀は死なないさ。二人いるんだからな」

志鳥はベッドの少年に目を向ける。

「帰って来いよ。有道、秀道。みんな待ってるぞ」

鷹人と真吏が見守る中で、義父が話しかけている少年の能力では。

「くそっ、なんだよこれは」

途端に秀道(ひでみち)が目を覚ます。
そして肉体と有道の状態が異常な事に気づく。
躰が重い。
脳が二つとはいえ躰はひとつだ。

「しっかりしろ、有道!」

秀道が叫んだ。

(ああ……秀道)

肉体は秀道の脳内に少年の声が響いた。
軽口の兄の声が、どことなく弱々しい。

(ヒド、ぼくはもうダメみたいだ)
「馬鹿を云うな!」

書き消すように秀道が声を荒げた、有秀の瞳の奥で。
暗闇の脳内空間の中で二人の少年が向かい合っている。