「ヒューマノイドって、どうして女型が多いんですか?」
バーナ重工業の製造したアルキメット・レアタイプの三体も全て女型だ。
渕脇や志鳥の趣味なのかと思っていたのだが、テレビで紹介された他企業のヒューマノイドも女型なのである。
「染色体の都合かな」
志鳥はカップに珈琲のおかわりを注ぐ。
「人間は元々は女性なんだ。男の染色体があると、男になるわけなんだが」
ヒューマノイドは男型は原因は不明だが、育たずに死んでしまうことが多い。
成長しても男性生殖機能は見た目にはあるものの、人間のように子孫を増やすことはできない。
「おれが研究を離れて二十年経つが、いまだにそれの原因や謎はわからないようだ。……まあ人間にとっては、その方が都合がいいんじゃないかな」
もしヒューマノイドが子孫を遺せるようになったら新たな新人類として、人間を支配することになるかもしれない。
それほどにアルキメット・レアタイプのヒューマノイドは生物として完成しているのだ。
志鳥の言葉を訊きながら、真吏は珈琲を呑み込んだ。
「だから制御チップなんかも必要なんですね。ただ単に、力や知能を抑えるものかと思っていました」
制御チップはヒューマノイドが変異して、子孫を増やさないように見張る道具でもあったのだ。
「清白もですか?」
今日は喫茶店地下の研究室で、一日がかりの定期メンテナンスを受けている。
人間ドックのようなものだ。
志鳥は頷く。
「ただ清白は、埋め込み型じゃない。外付けなんだ」
「え?ということは、普段は……」
「大変だ。ぼくのお義父さん、違法行為してる」
話を訊いていた今は有道らしい有秀が、ショックを受けたような演技をする。