その喫茶店に真吏は再び訪れていた。
すっかり常連客である。
今日は金曜日で仕事帰りであり朝の天気予報では、夜は雨が降ると伝えていた。
持参した傘は傘立てに入れてある。
カウンター席の真吏はジャーナリストマスターである志鳥と、彼のアシスタントヒューマノイド清白に、仕事の愚痴をこぼしていた。
真吏が出入りしている編集社に身長が小柄で、大きな瞳が特徴的な可愛いらしい女性社員がいる。
性格は控えめの大人しい感じで、男の守りたいという保護本能をくすぐられる女性だが真吏はなぜか、この手の同性に嫌われる。
普通に会話しているだけだし、仕事でも必要事項しか話していないのだが、それが高飛車で意地悪に映るらしい。
そしてどういうわけか性格が少々攻撃的な女友達とつるんでおり、真吏は理不尽な怒りの捌け口になっているのである。
「私が何をしたっていうのよ」
フルーツパフェの苺を口の中へ放りこむ。
店内のテーブル席にいる少年が、そんな真吏の話を訊いている。
「超天然」
秀道が無糖炭酸水のストローを口につけた所をみると、今は秀道のようだ。
「ま、誤解されやすい女ではあるな、あんた」
真吏は誰にも媚びない。
友達はいるが、似たような性格の人間だから気づかないだけだろうか。
「放っておけよ。仕事も出来ねえ何もなんねえ女の戯言なんざ、何の価値もない」
「そういう子に限って、お金持ちに好かれるのよ」
「結局、あんたも権力と財力かよ。同じじゃねえか」
「渕脇と食事でも、どう?真吏さん」
志鳥がカウンターに手をつく。
「歳上が好きでアポがとれないが、会ってみたいんだろう?」
「えっ……」
彼女らしくなく、動揺している。
真吏には渕脇忠行に憧れがあるのだ。