咎人と黒猫へ捧ぐバラード


(マスター)である志鳥が頷いた時。
ドアを叩く音がした。
今はランチタイムを終え一度閉店しているので、営業はしていない。
清白がドアを開けると二人組の若い女性が見え、何やら言葉を交わし帰って行ったようだ。

「なんだったんだ?」
「鷹人のファンのようです。休憩時間に外で会えないか、ということでしたが。取り込み中につき無理だとお伝えしました」

清白は答えると何事もなかったかのように、再び残りのテーブルを布巾で拭き始めた。
有秀はもちろんだが、鷹人目当ての客も多い。
その中から交際に発展したこともあるようだが、必ずフラれて終わるらしい。

「自由気まますぎるんだよなあ。あのお嬢さんも似たようなものだから、いい感じだと思うんだが」

志鳥はディナータイムに向けて料理の下ごしらえを始めた。

「清白にも恋人ヒューマノイドが欲しいよな。色々考えてみる」

創造主である志鳥は厨房に入っていき、その背中を清白は見届ける。

「恋人。(わたくし)の好きな人、ということでしょうか。」

主に聴こえない程度に清白は呟く。

「わかりませんね。人間は」

清白は同種とか、そんなものは必要なかったのだ。
その答えはわかっていたし出ていたからだ。
それは恋心なのか親への愛情なのかは、わからない。
だが穏やかで優しい温度は感じているのだ。
清白は掃除を終えると洗面をするため、洗面所へ向かって行った。

下階の義理の父親と人工生命体の姉が掃除をしながら天井を眺め、思惑を勝手に巡らせている頃。

鷹人が買ってきたオモチャを取り出していると黒猫は待ちきれないのか匂いを嗅ぎ、そわそわと青年の周りを動いている。
袋から取り出した途端、飛びかかるように夢中で遊び始めた。

「すっかり親バカね」

鷹人の部屋は猫グッズだらけだ。

「あなたのことも、覚えているみたいだな」

今回は警戒もせず真吏の振る猫じゃらしを夢中で遊んでいる。

「前に会った時より、大きくなったね。まだまだ子猫だけど。名前は決まった?」

夢中で追いかける黒猫に自然と笑顔が零れる。

「ネマだ」
「ネマ?」

日本の妖怪の名前から取った名前だという。

「ネコマタのネマ、ね」

真吏がそっと撫でる。

「そっかあ。良かったね、名前をもらえて。可愛いし、面白いわ。いいなあ、猫」

真吏のマンションはペット不可であるため、飼えない。

「こいつは完全には猫じゃない。見た目には猫だが」

青年の言葉に真吏は顔をあげる。

「遺伝子操作とか?」
「そんなんじゃない。クローンでもない。だが珍しい何かだ」
「本物のネコマタなの?」
「さあな……ただ」

鷹人が黒猫の頭を撫でた。

「こいつもおれも、生きていることには違いない。死ぬまでの間は生きる。それだけのことだ」

黒猫に指を伸ばすと喉を鳴らして顔を磨り寄せている。
黒髪の美青年が、黒猫と戯れている。
女子力の高いパンケーキ作りが得意で、煮込み料理も旨いという。
無口で無愛想でヒューマノイドを破壊してしまう強さとやや無慈悲な所もあるが、自分を持っている若者だ。

年下には興味はないはずなのに、この若者は惹き付けられる魅力がある。
真吏はもっと青年を知りたいと思った。

しばらくして遊び疲れた黒猫は餌を食べ、欠伸をして身体を伸ばす。
胡座をかいた青年の脚の間に入ると、丸まって眠ってしまった。

「店を継ぎたい。その際には、保護猫中心の猫カフェにしたい」

鷹人は今まで、漠然と裏稼業と店の手伝いをしてきた。
今回、黒猫を保護したことで目標が出来たらしい。

「鷹人君が猫カフェねえ」

猫だけではなく鷹人目当ての女子も増え、繁盛するかもしれない。

「夢が叶うといいね。その際にはオススメ記事、書いてあげる」
「そうなるように努力する」

生真面目に青年が答える。
真吏は前々から思っていた疑問を口にした。

「どうして危険な護衛業なんてしているの?マスターの手伝いで、じゅうぶんじゃない」

無愛想な若者だが見た目はいいし、働き者の鷹人ならばやっていけると思うのだが……。

「あなたは、おれが普通に見えるのか」

青年の黒い瞳に見つめられて、真吏は返答に窮した。
どんなに強力なヒューマノイドも倒せてしまう。
運動神経も並外れている。
そうである理由がある。
鷹人は黒猫をなでた。
完全には眠っていないのか、ゴロゴロと喉を鳴らしている。

「おれは事実上、死人だ」
「死人って」

真吏が彼を知ったのも口コミだ。
改めて調べようとしたが、ネット検索にも引っ掛からなかった。
制限をかけているのかと思っていたが違うらしい。
真吏は率直に、この若者に協力したいと思った。

「私も……」
「あなたは関係ない。余計なことはしないでくれ」

真吏の考えがわかったのか、鷹人が口を挟んだ。

「自分の事は、自分でなんとかする」

突き放したように鷹人が云った。
彼は自分が何者であるかは、わかっているようだ。
いつもの真吏なら激しく言い返す所だが、それを抑えた。

「……わかったわ。プライベートなこと、ずけずけとごめんなさい」

謎めいた青年を単に知りたい好奇心と、役に立ちたいと思った老婆心からだったが、配慮に欠けたと思った。
胡座の中ですやすやと眠る黒猫を、真吏はそっと撫でる。
すると眠ったまま身体と足をピンと伸ばし腹を見せて反応し、ゴロゴロと喉を鳴らす。

「また、ここへ来てもいい?」
「ああ」

青年もそれ以上は何も云わず、時間は流れていった。


僅かに熱気の帯びた風の吹く夜である。

白銀の月光の下、夏色のかかったドレスを纏った風の妖精が静かなワルツを楽しんでいるような風であり、夜であった。

「文化祭も終わったら、いよいよ受験まっしぐらだなあ」
「そうだな。あっという間の三年間だったよな」

私服姿の高校生の少年二人が並んで歩道を歩いている。
彼等の学校は今、文化祭の準備に終われているらしい。
この日もその準備の為に学校へ残り、それを終え学習塾からの帰宅途中であった。

時間は夜九時前。
深夜ではないが未成年者が出歩くには、少し遅い時間かもしれない。

表通りから裏路地に入ると自動車や店の賑わいは落ち着き静かで人影もなく、静穏に風が揺れている。
人気のない風の幻想的な舞踏会がざわめいたのは、一人の人影が全くそれを無視し突っ切ったからである。

黒のスーツ、黒いネクタイに白いシャツを身に着けた男であった。
年齢は三十才前後くらいだろう。
片手に通勤用の革製鞄を持っている事から、仕事帰りのサラリーマンのように見えた。

家路を急ぐ少年たちとすれ違った、その時だ。
何か()ぜるような音がしたかと思うと少年の一人が突然、前屈みに倒れた。
倒れた少年の胸の辺りから大量の血がみるみる池を作っていく。
もう一人の少年は悲鳴をあげ倒れた少年の躰を揺すり呼びかけるが、反応しない。

少年二人を照らしていた月光を人影が遮り、少年は友人に危害を加えであろう人物を見上げる。
逆光になりその人影の顔は見えない。
身の危険を感じた少年は、背を向けて全力で走り出す。

再び何かが爆ぜる男がすると、その少年も倒れる。

サラリーマン風の男はそれだけを確認すると、それ以上は何もせず再び闇の中へ姿を消した。




バーナ重工業の専務室である。
社内で起きたヒューマノイド流出事件は、いまだに解決にいたっていない。
責任を取り辞任するはずだった渕脇忠行も不問に付すとされたままだ。

「ふん。運だけはいい奴だ」

吐き捨てたのは茂澄臣吾(もずみしんご)である。
渕脇忠行より二才年下で、役職は専務取締役だ。

「本来ならば、おれがバーナ重工業の権限を継ぐはずだった」

臣吾は吐き捨てる。
彼はビジネスにおいて優秀な人物だ。
バーナ重工業の存続に捧げており、これからもそれは続いていくはずであった。
渕脇忠行が帰って来るまでは。
忠行は研究しか興味のないお坊ちゃんだと思われていたし、仕事だと理由をつけて実家にも顔を出すこともなく無能な息子だと嘲笑されており、敵対者などいないはずだった。

臣吾自身の家の経営が傾いた時、光展に助けられたが、それも彼には好都合であった。
関係を良好に保つため、彼はバーナ重工株式会社の会長の娘と結婚もした。
だが光展は臣吾の期待を裏切り、息子の忠行に権限を託し引退したのだ。

「あのボケ老人め。だが、おれは諦めんぞ」

臣吾と忠行の違いは能力にもあったが何より歴然としているのは、その欲深さだろう。
バーナ重工業を手に入れるため、そして自身の前進のため、彼は頭を下げ蜜月を演じてきたのだ。

「あのヒューマノイドは無価値だ」

忠行は自身がヒューマノイド開発に加わっていた科学者である。
会長でもあり父親であった光展は、そこも評価していたのかもしれない。
バーナ重工業は品質第一の高級ヒューマノイド生産を売りにしていたが、臣吾はランクを下げ大量生産し、気楽に買えるを売りにしたかったのだ。
安い受注の粗悪品だと云われようが数さえ売れればいい、という考えだった。

機密が流れたとあれば彼の責任は重大なものとなっていいはずだが、一向に進展しない。
流出させたという職員は告発されたものの、証拠不十分で不起訴となってている。

渕脇忠行は社内の不要と思われる催事を次々と切り捨て、能力のある者を昇進させ支持を獲たが、臣吾は能力は関係なしに役職のほとんどを血族で登用し固めた。
彼の血縁でない者は、いくら能力が高くともそれ以上は昇進できないのである。
臣吾を批判する者は次々に会社を去り、彼を支持する者だけで運営していたのだ。
情けで光展からの支持者を残しているが、それも終わりに近いのかもしれない。
彼は完全な血族による会社にしようとしている。

彼を批判する社内は囁く。

「欲深い男だ。すべてを手にいれなければ、気がすまないらしい」

ビジネスにおいて、それは悪い事ではないのかもしれないが、尽きることのない欲望に彼は呑み込まれている。

「呑み込まれたというよりは、欲ばりの化け物だな。だから先代は、渕脇忠行に継がせたんじゃないか」

彼等の囁きは大きくないが、臣吾にとっては耳障りだ。

「害虫どもは排除する。わかっているな」

それ以上、彼を貶める批判的な声は聞こえなくなった。

「あとは、あの男を引き摺り下ろすだけだ」

水面下での蠢動(しゅんどう)は、静かに続いている。

その喫茶店に真吏は再び訪れていた。
すっかり常連客である。
今日は金曜日で仕事帰りであり朝の天気予報では、夜は雨が降ると伝えていた。
持参した傘は傘立てに入れてある。

カウンター席の真吏はジャーナリストマスターである志鳥と、彼のアシスタントヒューマノイド清白(スズシロ)に、仕事の愚痴をこぼしていた。

真吏が出入りしている編集社に身長が小柄で、大きな瞳が特徴的な可愛いらしい女性社員がいる。
性格は控えめの大人しい感じで、男の守りたいという保護本能をくすぐられる女性だが真吏はなぜか、この手の同性に嫌われる。

普通に会話しているだけだし、仕事でも必要事項しか話していないのだが、それが高飛車で意地悪に映るらしい。

そしてどういうわけか性格が少々攻撃的な女友達とつるんでおり、真吏は理不尽な怒りの捌け口になっているのである。

「私が何をしたっていうのよ」

フルーツパフェの苺を口の中へ放りこむ。
店内のテーブル席にいる少年が、そんな真吏の話を訊いている。

「超天然」

秀道が無糖炭酸水のストローを口につけた所をみると、今は秀道(ひでみち)のようだ。

「ま、誤解されやすい女ではあるな、あんた」

真吏は誰にも媚びない。
友達はいるが、似たような性格の人間だから気づかないだけだろうか。

「放っておけよ。仕事も出来ねえ何もなんねえ女の戯言なんざ、何の価値もない」
「そういう子に限って、お金持ちに好かれるのよ」
「結局、あんたも権力と財力かよ。同じじゃねえか」
「渕脇と食事でも、どう?真吏さん」

志鳥がカウンターに手をつく。

「歳上が好きでアポがとれないが、会ってみたいんだろう?」
「えっ……」

彼女らしくなく、動揺している。
真吏には渕脇忠行に憧れがあるのだ。
研究室あがりで経営には興味がなかった彼が、才能で会社を発展させた。
実業家だ経営者だと名乗る人間に接する機会はあるが、渕脇は別格の違う人種だ。

「連絡を取ってあげようか」
「はい。ぜ、ぜひ!そのうち。今は心の準備ができません」

真吏にしては消極的な発言だ。
それだけ慎重に行動したいということのようである。
パフェを完食し店内を改めて見回した。

「マスターは、どうしてここでお店を開いたんですか?」

志鳥はパフェ皿を下げると、真吏の前にミックスサンドの皿を置く。

「ここの店、建物のオーナーは古い友人でね。有道と秀道はそいつの孫なんだが、老衰で亡くなった」

ビルと店を買い取り改装して店を始めたが、鷹人一人だけのはずが少年二人(?)も引き取ることになり、共に暮らしているのだという。

「独身男がいきなり三人の子持ちになった。いやあ、きつかったね」

志鳥は笑っていたが、並大抵の苦労ではなかったと思う。
しかしそれぞれクセのある男子たちではあるし、普通の人間が育てられるとも思えない。

特徴を理解しているからこそ一緒に暮らしていけるのかもしれないが、志鳥自身も相当な変わり者だ。

志鳥は喫茶店の店主であるが、医学、工学博士号を取得しており医師免許も保有している。
それはヒューマノイドに人工皮膚や組織を使用する場合、医療行為とみなされるからだ。
渕脇忠行も同様である。

「おれの場合、飾りの免許だからな。世間で数をこなして専門に働いている奴等には、かなわない」

この飾り気のない性格が義理の息子三人に影響させているのだと、真吏は思う。

「今は猫もヒューマノイドもいて。子だくさんですね」

志鳥は嬉しそうに頷いた。

「華先生の話だと猫も犬も、先祖は同じだっていうし。人型ヒューマノイドだって胚から造られているんだから、似たようなもんさ」

志鳥の中では犬も猫もヒューマノイドも人間も全て、ひとくくりの生物のようだ。
恋人とうまくいかず別れたと云っていたが、志鳥のせいだと真吏は思う。
ふとテレビ画面を見るとワイドショー番組が流れていて、最新型ヒューマノイドの発表とプレゼンテーションの様子が映し出されている。
真吏はヒューマノイドについて、かねてからの疑問を訊ねた。

「ヒューマノイドって、どうして女型が多いんですか?」

バーナ重工業の製造したアルキメット・レアタイプの三体も全て女型だ。
渕脇や志鳥の趣味なのかと思っていたのだが、テレビで紹介された他企業のヒューマノイドも女型なのである。

「染色体の都合かな」

志鳥はカップに珈琲のおかわりを注ぐ。

「人間は元々は女性なんだ。男の染色体があると、男になるわけなんだが」

ヒューマノイドは男型は原因は不明だが、育たずに死んでしまうことが多い。
成長しても男性生殖機能は見た目にはあるものの、人間のように子孫を増やすことはできない。

「おれが研究を離れて二十年経つが、いまだにそれの原因や謎はわからないようだ。……まあ人間にとっては、その方が都合がいいんじゃないかな」

もしヒューマノイドが子孫を遺せるようになったら新たな新人類として、人間を支配することになるかもしれない。
それほどにアルキメット・レアタイプのヒューマノイドは生物として完成しているのだ。
志鳥の言葉を訊きながら、真吏は珈琲を呑み込んだ。

「だから制御チップなんかも必要なんですね。ただ単に、力や知能を抑えるものかと思っていました」

制御チップはヒューマノイドが変異して、子孫を増やさないように見張る道具でもあったのだ。

清白(スズシロ)もですか?」

今日は喫茶店地下の研究室で、一日がかりの定期メンテナンスを受けている。
人間ドックのようなものだ。
志鳥は頷く。

「ただ清白は、埋め込み型じゃない。外付けなんだ」
「え?ということは、普段は……」
「大変だ。ぼくのお義父(おとう)さん、違法行為してる」

話を訊いていた今は有道らしい有秀が、ショックを受けたような演技をする。



有秀(ありひで)君は高校生よね」

制服はなく服装は自由で、髪型も特に決まりはない学校だという。

自由な校風だが社会的に相応しい行動と身なりをせよ、と一応、学校からの注意事項はある。
有秀(ありひで)がこの学校に進学を決めたのは、その点にあった。

「志鳥さん、ぼくにアイスキャラメルラテちょうだい」

秀道(ひでみち)から有道(ありみち)に変わった有秀(ありひで)が、養父に違うドリンクをリクエストする。

「中学校までは大変だったよ。髪の色も瞳の
色も生まれつきなのに、黒に染めろとかさ。瞳の色なんて、直せないよ」

それが認められる学校を探したが見つからず、髪を染める事が禁止されているはずの学校で髪を黒く染めて登校し、瞳の色を誤魔化すために眼鏡を着用し中学校時代を過ごした。

「依頼で最初に会った時、制服着てたけど……あれは違うの?」
「あれは高校制服コスプレ。せっかくの高校生だから、着てみたいと思って」

同級生の間でも制服を着用してその気分を楽しむ、というのが流行っているらしい。

そのように今の高校に進学してからはモラルを守れば何もかもが自由であり、生徒もアクセサリーを身につけていたり髪の色が違っても指摘されることはない。

「有秀君の通っているその学校、確か全国的に学力トップなのよね?優秀だわ」

真吏はコーヒーカップに口を付ける。
清白(スズシロ)が淹れた珈琲は美味しい。

「脳がふたつだからじゃないかな?覚える容量が大いんだよ、きっと」

真吏の言葉に有道は笑ったが、志鳥は保護者らしくこの少年の将来を心配している。

「あれだけ自由な校風だと卒業して社会に入った時、窮屈に感じるかもしれないな」

有道は出されたキャラメルラテをストローで、(すす)る。

「でも自由を満喫しちゃって満足して、社会では普通に溶けこんじゃうみたいだよ。先輩が云ってた」

今は有道な有秀がキャラメルラテを、あっという間に飲み干し、おかわりを催促する。
志鳥は呆れながらそれを用意する

「それだといいがな。それとおまえが通学路に使ってる道。通り魔が出たそうじゃないか。拳銃を持っている上に、まだ捕まってないみたいだし、気をつけろよ」
「わかった。じゃあアキラルに依頼だね。家族割り引きでやってもらおうかな」

有秀が再び笑う。

「今度、学校の文化祭があるんだよ。今年で最後だし、中止なんてなって欲しくないんだけどなあ」

残念そうにしている少年に、真吏は訊ねる。

「何の出し物するの?」