(マスター)である志鳥が頷いた時。
ドアを叩く音がした。
今はランチタイムを終え一度閉店しているので、営業はしていない。
清白がドアを開けると二人組の若い女性が見え、何やら言葉を交わし帰って行ったようだ。

「なんだったんだ?」
「鷹人のファンのようです。休憩時間に外で会えないか、ということでしたが。取り込み中につき無理だとお伝えしました」

清白は答えると何事もなかったかのように、再び残りのテーブルを布巾で拭き始めた。
有秀はもちろんだが、鷹人目当ての客も多い。
その中から交際に発展したこともあるようだが、必ずフラれて終わるらしい。

「自由気まますぎるんだよなあ。あのお嬢さんも似たようなものだから、いい感じだと思うんだが」

志鳥はディナータイムに向けて料理の下ごしらえを始めた。

「清白にも恋人ヒューマノイドが欲しいよな。色々考えてみる」

創造主である志鳥は厨房に入っていき、その背中を清白は見届ける。

「恋人。(わたくし)の好きな人、ということでしょうか。」

主に聴こえない程度に清白は呟く。

「わかりませんね。人間は」

清白は同種とか、そんなものは必要なかったのだ。
その答えはわかっていたし出ていたからだ。
それは恋心なのか親への愛情なのかは、わからない。
だが穏やかで優しい温度は感じているのだ。
清白は掃除を終えると洗面をするため、洗面所へ向かって行った。