やがて真吏の前に、白い受け皿に乗った同色のティーカップに注がれた珈琲が出される。
「……美味しい」
素直に感想を述べた。
口当たりが優しいまろやかな味だ。
清白は無表情に頭を下げる。
「君にはすまないと思っているんだ。一部記憶は残したからな。もう襲うようなことはしないから、赦してやってくれ」
「一部記憶を?そんなことが可能なんですか?」
「まあね。そんなことより出来たようだぞ」
真吏の質問を軽く受け流しす。
厨房から出てきた青年に、再び真吏が声をあげた。
鷹人だった。
黒い白いシャツに黒いスラックス、黒いエプロンを身に付けている。
真吏の前に皿を置く。
生クリームとチョコレート、イチゴなどのフルーツを美しくデコレーションしたパンケーキだった。
「鷹人君が作ったの?」
真吏が見上げると鷹人は頷く。
「あなたはまた、怒るだろうが……護衛は副業だ」
喫茶店での仕事が本職だという。
真吏は怒りはしなかったが、色々と驚いた。
「すっごい可愛い。鷹人君、女子力高いんだね」
「あなたが無さすぎなんだ」
それを訊いた秀道が、テラス際のテーブル席で澄まし顔で、口を開く。
「きったねえ部屋だったよな。家事ヒューマノイドを使えばいいだけなのに」
「いいの。ヒューマノイドに頼らなくても、なんとかなるもの。メンテナンス費用だってかかるし」
秀道が意地悪く目を細める。