玄関で物音がした。
誰かが静にドアノブを動かしている。
少年も含め来客の予定はないし、第一、チャイムも鳴らさずドアノブを回すだろうか。
心臓が凍りつき、冷たい血が全身に送り込まれているような感覚に包まれた。
躰が凍結するように動かない。

「高竹さん、お客さんみたいだよ」

のんびりとした少年の声を聞き何とか、躰を動かそうと努力する。
ドアは間違いであるかもしれないし、自分の被害妄想かもしれない。
有秀はその様子を視界に入れつつカフェオレカップに口を付け、腕時計を見ている。

「そろそろかな」

残りのカフェオレを全て飲み干し、テーブルに置いた。

「高竹さん、実は今から……」

少年は全てを伝えることができなかった。
いつの間にかマンションベランダもから侵入した何者かによって、催眠ガスが噴射されたからだ。
脳だけ双子の少年の躰がぐらりと揺れて、ソファーに倒れる。

「有秀君!」

真吏は口を手で押さえたものの、無駄な足掻きであった。
真吏もまたリビングに倒れた。
ベランダ側のドアのガラスは切られ、外から人型だが人ではない、それが侵入した。
玄関側からも同じである。
それぞれ動かなくなった女と少年を抱え、外へ連れ出して行った。

その様子を一部始終、目撃していた者がいる。
それはアキラルと名乗る青年でも双子の有秀でもない。
それらの存在に、まだ誰も気づかなかった。