「でもねえ、それが社長の息子は気に入らなかったんだよね。フラれたみたいでさ」

親である勝部も面白くなかった。
息子がその事務員にアプローチして、きっぱりと断られた現場を偶然、目撃していたからだ。

歪んだ少年の心は友を呼び警察署長をしていた朝霧の息子も、勝部の息子とほぼ同じ状況だった。
当時大学に在学中だったが将来なりたい夢も職業もなく、親に奨められた学校に入り多額の小遣いを受け取っては仲間と派手に過ごしていた。

荒んだ愛情を一心に受け育ち出会った二人。
そして惨劇は起きた。
鬱憤を晴らすように思いつく限りの残虐な暴力を加え被害者を虐殺した。
両親が何とかしてくれる。
彼等は警察に捕まったが釈放され、悠々自適な生活を送っている……

「こんなのおかしい。バカはどこでもいるわね。まったく」

真吏は改めて憤慨しノートパソコンを閉じる。
あれからアキラルは姿こそ現さないものの、暴漢に襲われることもなくなった。

このまま何事もなく終わって欲しい。
あれで終息したと思いたかった。
ふとアキラルがヒューマノイドから自分を助けた場面を思い出す。

あの時の彼は道場主をしていた父親に似ていた気がする。
構えや雰囲気が父親と似ているように感じたのだが。

「そんなわけないのに」

父親は弟子は取っていたものの、子供が入門していたのは小学生からだ。
それに二十年前に行方不明になっていて、あの青年との接点は年齢的にも考えられない。