「じゃあ、始めるか。」
一慶は、ボクと対峙する様に座った。
「慣れるまでは、こうして向かい合って座りながら、お前の祈りを誘導する。《対座法》という指導法だ。最初は、『祈り』の感触を掴むだけで良い。俺の言う通り、段階を踏んで気持ちを込めてみろ。」
「うん。やってみる…。」
何から何まで初めての事ばかりで、緊張する。心なしか、胃の辺りがキリキリし始めた。
「本来は、《結跏趺座(ケッカフザ)》という座り方をするんだが。とりあえず正座で構わない。但し、両膝の間は、拳一つ分ほど空けて座る…。要は、長時間の修行に耐えられれば良いんだ。難しく考えず、『自分が一番楽だ』と思う姿勢で座ってみろ。」
「うん。」
返事はしたものの、どうにも姿勢が定まらない。
そもそも正座自体が、やや苦手だ。
『楽に座る』という観念が無い。
「お前な。まだイントロ部だぜ?いきなり躓(ツマズ)いてんじゃないよ。これが出来なきゃ、先に進めねぇぞ?」
「はい…頑張ります…。」
…怒られた。でも当然か。
修行は予想外に厳しいものだった。
一挙一動にダメ出しが入り、いちいち凹む間もなく、一慶の指導の声が飛ぶ。
「手は《法界定印(ホッカイジョウイン)》を結ぶ。前に鍵爺に教わったの、覚えているか?」
「……忘れた。」
「だと思った。」
今度は呆れられた。
だが、これも仕方が無い。
ボクが、いけないのだから。
それから、印の結び方を丁寧に教えて貰った。文字通り、手取り足取りの指導である。そうして漸く形が決まると、いよいよ観想(カンソウ)に入る。
だが。これがなかなか難しかった。
一慶の指導にも熱が入り、瞑想室に緊張が漲る。
「良いか?印を組んだら、気持ちが落ち着くまで、楽にしていろ。無理に祈ろうとしなくていい。祈るタイミングを掴む『練習』だからな。軽く目を閉じて、ゆっくり呼吸するんだ。」
「うん、わかった。」
ゆっくりゆっくり─…
ボクは、無相の世界に足を踏み入れた。
一慶は、ボクと対峙する様に座った。
「慣れるまでは、こうして向かい合って座りながら、お前の祈りを誘導する。《対座法》という指導法だ。最初は、『祈り』の感触を掴むだけで良い。俺の言う通り、段階を踏んで気持ちを込めてみろ。」
「うん。やってみる…。」
何から何まで初めての事ばかりで、緊張する。心なしか、胃の辺りがキリキリし始めた。
「本来は、《結跏趺座(ケッカフザ)》という座り方をするんだが。とりあえず正座で構わない。但し、両膝の間は、拳一つ分ほど空けて座る…。要は、長時間の修行に耐えられれば良いんだ。難しく考えず、『自分が一番楽だ』と思う姿勢で座ってみろ。」
「うん。」
返事はしたものの、どうにも姿勢が定まらない。
そもそも正座自体が、やや苦手だ。
『楽に座る』という観念が無い。
「お前な。まだイントロ部だぜ?いきなり躓(ツマズ)いてんじゃないよ。これが出来なきゃ、先に進めねぇぞ?」
「はい…頑張ります…。」
…怒られた。でも当然か。
修行は予想外に厳しいものだった。
一挙一動にダメ出しが入り、いちいち凹む間もなく、一慶の指導の声が飛ぶ。
「手は《法界定印(ホッカイジョウイン)》を結ぶ。前に鍵爺に教わったの、覚えているか?」
「……忘れた。」
「だと思った。」
今度は呆れられた。
だが、これも仕方が無い。
ボクが、いけないのだから。
それから、印の結び方を丁寧に教えて貰った。文字通り、手取り足取りの指導である。そうして漸く形が決まると、いよいよ観想(カンソウ)に入る。
だが。これがなかなか難しかった。
一慶の指導にも熱が入り、瞑想室に緊張が漲る。
「良いか?印を組んだら、気持ちが落ち着くまで、楽にしていろ。無理に祈ろうとしなくていい。祈るタイミングを掴む『練習』だからな。軽く目を閉じて、ゆっくり呼吸するんだ。」
「うん、わかった。」
ゆっくりゆっくり─…
ボクは、無相の世界に足を踏み入れた。