しばらく道なりに歩いても、それっぽい家は見つからない。

そうこうしているうちに、陽も沈みかかってきた。

僕は、もう家に帰ろうと、元来た道に戻ろうした。


その時だった。

遠くから、赤子が泣く声が聞こえてきた。

何かに引き寄せられるように、僕はその声を辿って行った。

すると、一軒の家の中から、赤子の鳴き声が聞こえて来た。


「さあ、もう泣かないで。」

その声に、ハッとした。

よく聞いた声。

きっとお母さんだと思った僕は、家の中を塀の隙間から覗き見た。

それは、間違いなく母親だった。

母親が、赤子を抱いていたのだ。


その瞬間、僕の中で信じていたモノが、一気に崩れた。

母親には、新しい家族がいる。

もう僕は、いらないんだ。

そう思ったんだ。