俺は密かに思っていた。

この人が紛れもなく、自分の母親なのだと。


こうして、目が見えるかどうかの瀬戸際に、俺を想うだなんて。

なんて、憐れなのだと思った。

せっかく守った高坂の家も、俺が婿養子に行く事で、消えてしまう。

それだというのに。

それだというのに。

あの人は。

あの人は……


俺は廊下に膝間づいた。

涙が零れて、たまらなかったからだ。


そんな俺に気づいたのか、司が廊下に来た。

「和弥……」

俺は嗚咽を漏らしていた。

「あの方、お前のお母様なんだろう?」

泣き崩れて、廊下に俺の涙が染み渡った。


捨てられたと思っていたのに、あの人はずっとずっと……

俺の事を想っていてくれたんだ。