「うん、そうね。お体には気を付けて下さいって。」

「分かった。」

それは、義母にだけ向けられた言葉では、ありませんでした。


上京する和弥に。

身体だけは、気を付けて。

それだけは、伝えたいという思いがありました。


「和志、亜子。気を付けて。」

「はーい。」

二人は気づいているのだろうか。

隣に座る人が、自分のお兄さんなのだと。


そしてゆっくりと電車は、動き始めました。

私達の子供を乗せて、ゆっくりと。


それが、和弥を見た最後の姿でした。

それから、医者になったのかも分かりません。

ただただ、元気に過ごしていればと思います。


今も会いたい。

できれば会いたい。

目が見える間に、その姿を目に焼き付けておきたい。

そればかりを、願ってきました。