そこには、和弥がいたんです。

見間違えるはずはありません。

我が子ですから。


和志と亜子が、手前の席に座って、あの子は奥の席に座っていました。

晴れやかなセーターを着て、あの子は私に気づかれないようにしていました。

私も”和弥”とは、話しかけられませんでした。


卒業式の時の。

『捨てた子供のところに来るな。』

という言葉が、耳に残って離れなかったからです。

でも、元気でいる事。

そう言えば、医大に進むと聞いたので、一人暮らしをするんだろうと思ってましたから、電車で上京するのだと考えていた事も。

何もかも、あの子の事が思い浮かんできました。


「お母さん。何かお祖母ちゃんに伝える事、ある?」

亜子は、顔を出して聞いて来ました。